OTNK日記

20代。ゲイ。種々雑多な日記。

藍染惣右介に学ぶ売り込みの極意

自分を売り込むということは非常に難しい。営業とか就活とか恋愛においても自分を売り込まなければならない場面は多く存在する。売り込みとは要は、自分語りだ。自社の商品を、自己の学生生活で学んだことを、自分が如何に恋愛の魅力に溢れているかを滔々に熟々とまくし立てることが必要になってくる。普通に生きてれば自分の売り込みをしなければいけない場面には当然出くわす。

「あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ。」

これはみんな大好き週刊少年ジャンプのみんな大好き「BLEACH」という作品の作品上最大級の黒幕である藍染惣右介が、当時氷雪系最強と謳われていた十番隊隊長日番谷冬獅郎に投げた言葉である。作者の久保帯人の独特の感性から繰り出される通称「オサレ」と呼ばれる表現方法が有名な「BLEACH」だが、その数ある「オサレ」の中でも有数のオサレセリフとされているのが上記セリフである。

先日、地元の信金に入行した友人と久しぶりに食事をした。その際に彼は信金の口座開設を勧めてきた。久しぶりに会った友人との席で仕事の売り込みをするなんて、なんと無粋なやつだろうか。なんて言う気は毛頭ない。彼も必死だったのだ。それはそれまでの仕事の苦労話を聞いていれば察しがついた。リアル池井戸潤みたいな世界が地元の信金では繰り広げられているようであった。

その苦労話を聞いた上での売り込みだ。自分も絆され、面倒な手続きを踏んででも彼の力になってやろうと思っていた。思っていた。しかし彼は売り込みの押しの一手として、その口座開設のメリットを大仰に語ってきた。金利は他とは違って~%とか、家族も開設すれば更にメリットが~とか、資産運用の提案が~とか言っていた。こんなにメリットだらけなのだから開設しないと損をする、とも言っていた気がする。

これらを聞いている最中ずっと藍染惣右介のセリフが脳内を巡っていた。商品については彼自身がそう言うのであるから彼の中ではそうなのであろう。しかし、問題はその売り込みの手法にある。情に訴えかけるところまでは良かった。しかし、押しの一手での手前味噌の大量贈与に自分は疑いを持った。疑いを強くしてしまった。

強い言葉は弱く見えるとはこのことだ。なぜ強い言葉を遣わないといけないのか。そこに疑いを持ってしまう。強い言葉の裏に隠れている虚勢のような心情を勘ぐってしまう。自分が疑り深い故であろうか。思えば昔から号泣という言葉に違和感を持っていた。号泣というあまりに強く感じる泣くという印象に浅はかさを感じていた。それなら、さめざめ泣くという方がまだ自分には悲しみが伝わりやすいものだ。

信憑性と懐疑の境は曖昧だ。しかし少なくとも、あまりに強気な断定は疑念を生む。反発を生む。これはきっと誰だってそうだ。

けれど彼だって仕方なかったのだろう。前述の通り必死だったのだ。自然と強い言葉も出てしまう。かと言って過小な売り込みが良いという訳ではない。難しい限りだ、きっと正解なんてないのだろう。ケースバイケース。これに尽きる。

彼は果たして今後どのような営業活動をしていくのだろうか。自分が感じた懐疑は自分だけのもので、案外広く受け入れられるかもしれない。

自分を語る、言い換えれば自分を外の世界に産むという苦しみ。産みの苦しみを旧友との間に見た。そして自分語りのメソッドは旧五番隊隊長藍染惣右介に学ぼうと思う。

 

BLEACH 20 (ジャンプ・コミックス)

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