ちょっとした休日の生贄召喚
遊戯王デュエルモンスターズというカードゲームをご存知だろうか。高橋和希の遊☆戯☆王を題材としたKONAMIが販売するオリジナルカードゲームである。
この遊戯王のルールとして生贄召喚というものがある。星四つまでのモンスターを召喚するには生贄は必要ないが、星5~6までのモンスターの召喚には1体、星7~8までのモンスターには2体の生贄が必要になる。要は強いモンスターを召喚するには弱いモンスターを生贄にする必要があるのだ。今思うと生贄なんて恐ろしい言葉をよく少年時代に使っていたものだと思う。
弱を犠牲にして強を召喚する。
少年時代、遊戯王にみられたこの哲学は今、形を変えて自分の前に現れている。
それは休日の過ごし方である。朝から晩まで働いたウィークデイを乗り越えた先にある心のオアシス。しかしこの休日の過ごし方に最近困っているのだ。
休日の過ごし方と一括りにいってもその過ごし方は十人十色、十人寄れば十国の者である。睡眠を取るのか趣味を取るのか、休息を取るのか活動を取るのか。何が理想の休日かと考え出すと、たちまちに二律背反のラビリンスにご招待されてしまう。
その解決策として物事に優先順位をつけるのが当然となってくる。デキる社会人は優先順位をつけるのがうまいという。自分はどっちかというとデキないほうの社会人であるが、それでも休日は満喫したい。デキないからこそ休日でフラストレーションを放出するのが必要になってくるわけだ。
あれもしたい これもしたい
もっとしたい もっともっとしたい
これはTHE BLUE HEARTSの「夢」の歌詞であるが、実際はそうはいかない。限られた時間の中で本物の夢を見るにはやはり順位が高いものを選んでいくしかないのだ。
眠たいけどやりたいことがあるから起きるし、本や映画をみるよりも会いたい人がいるから外に出る。低順位は高順位の生贄になり、一日の行動からは削除されていく。
果たして自分は何がやりたいのか。やりたいことの星の数を決めるのは大抵自分の裁量であるし、生まれながらの強力モンスターは休日にはほとんど存在しない。だからほんとにやりたいことを星8にして召喚するけど、たくさんの生贄を費やした割にはなにやってんだろ...ってなることもままある。そのままウィークデイの荒波に飲み込まれた日にはその週はなんともバッドウィークになること請け合いだ。
だから意気揚々と優先順位の選定に乗り出すんだけど、結局まぁ休日だし考えてもしょうがないか、なんていう元も子もないことを考えてしまう。きちっと計画しても画餅に帰すなんてことも多くあるわけだし...とか思っていると一日が終わることもある。その怠惰を召喚するために全てのものを生贄にしてしまう。
こりゃダメだ、なんて思った時には既に夢心地。きっと生贄にされているのは自分自身なんだ、なんて大仰なことを思いながら宵が近づいていく。きっと誰にでもあるようなことなんだろうけど、どうにかしたいもんだ。