ホモがキャバクラでグータンヌーボを開催した話

キャバクラへ行ってきました。

新潟への出張の際、一日の疲れをお酒で洗い流そうとなったのが仕事終わり午後6時。そこから新潟の美味しい日本酒を頂きつつ、仕事仲間の男同士で涙と汗に塗れたむさ苦しい話をすること1時間半。

そんな話にも疲れたのか、おじちゃんたちがキャバクラに行こうと言い出した。どうやら新潟の女の子は可愛いらしい。新潟美女と話したくなっちゃったおじちゃんたちの勢いに押されて自分も渋々参戦の手を挙げた。

これまでの人生でキャバクラなるものに行った回数は2回。大学生の時に、友達としこたま飲んでテンション上がって名古屋のキャバクラに行ったのが一回。もう一回は小学生の時にどういうわけか母親に連れて行かれた、地元岐阜県多治見市のキャバクラ「アーバンギャル」。全然アーバンじゃないところにアーバンギャルが存在し得るのか、未だに疑問ではある。

おじちゃんたちのユートピア的存在であるキャバクラだが、男好き男である自分にとっては逆にディストピアとなってしまう。

かわいい女の子と談笑し自らの自尊心を満たす場所、キャバクラ。しかし、まずもってお金を払ってまで女の子と話すまでもないし、そもそも知らない人と話すと人疲れをする。向いていない。恐らく自分は人類で最もキャバクラと相性の悪い人間の一人であろう。

分かっているつもりである。これまでの人生経験から自分がキャバクラに向いていないことは分かっているつもりだが、人付き合いという壁が自分の前に立ちはだかり、分かっているはずの事実を見えなくさせてしまうのだ。

そんな心持でいざ、キャバクラ。

キャバクラの門戸を叩くと、真冬の新潟の夜空の下で外に放り出したら凍え死んでしまいそうな服装をした女の子達が我々おじちゃんグループを迎えてくれた。品定めをするような目をしていたおじちゃんたちも、どうやら迎えてくれた女の子たちには好感触を抱いているようだ。

あの子、かわいくね？なんて男子高校生みたいなことを齢40歳代のおじさんが口々に言っている。あーうん可愛いですね、なんて適当に相槌をうつ。男の可愛い像を描くのは簡単だが、女の子となると最早どれが可愛くてどれが可愛くないのかを言い当てるのが難しい。一応の会話を合わせる為に自分の可愛い子を言ってみるが世間一般的に可愛いのかはまるで分からず地雷原を歩いているような気分にさせられる。

そんなことを思いながら案内された席に着く。どうやらお客一人に対して女の子が一人つくシステムのようだ。自分にも女の子が一人あてがわれる。そんなことよりあのボーイさん可愛くね？と言いたい気持ちを必死に抑え、女の子と対峙する。簡単な自己紹介を済ませ、いよいよ会話が始まる。

四半世紀も生きていないくらいで培ってきた毛が生えた程度のコミュ力とそれを補って余りあるサービス精神で自分もそれに対応する。

どうせならお姉ちゃんを笑わせたい。

お姉ちゃんと楽しく話したい。

どうせ話すなら楽しく...楽しく...

そんな思いでお姉ちゃんから会話を引っ張り出す。どこまで本気か分からないお姉ちゃんの素性、半生を聞きありったけの共感をぶつける。

どうやらキャバクラってのは面白いんだか面白くないんだか分からないような自分語りをする場所らしい。俺、凄いだろう？きゃー、すごい。俺、面白いだろう？きゃー、面白い。周りから聞こえる会話はそんなものばかり。お姉ちゃんも仕事だから、お客さんの気持ちよく話せるところを探り出すのが上手い。

対して自分はというと、体系の決まりきったやり取りから一歩先んじてお姉ちゃんの身を憂い、悩みを引き出し、お姉ちゃん本位の話をする新潟キャバクラ21時。

え？マジ？彼氏めっちゃカッコいいじゃん。へー！農家なんだー！流石、米どころ新潟！マジムキムキだもんね。いいじゃーん！やっぱ男は筋肉だべ？付き合って何年なの？あ、このお菓子おいしー！え、5年！？長いねーうらやましーSEXレスとかあるの？あー、あるよねー5年も付き合えばさすがにあるよねーでもさ、もう結婚間近って感じじゃん。え？この前ウエディングドレス試着したの！？めっちゃ見たい。写真見して。てかインスタやってる？

途中から自分はなにをしてるんだろうという疑問が首をもたげ始める。お金払ってまで女の子の身の上話を向こうのテンションにわざわざ合わせて相槌打っている現状は一体なんなのだろう。

うん、でもまぁいいよ。なんか自分のとこだけ女子会みたいになってるけど。グータンヌーボみたいになってるけど。女の子が楽しそうだし、おじちゃん達も楽しそうだし、まぁいいや。ベビーオイルとボディソープ混ぜれば保湿効果アップするって教えてもらったし。まぁ...いいや...これはこれでいいや...