21歳の時ハッテン場に行った話。
月一でブログ更新しようとなんとなく決めていたのだが4月は更新できず、あーそろそろブログ書かなきゃなーなんて思いつつこのブログを書き始めている。
なぜブログを書かなかったか?否、断じて否だ。書かなかったのではなく、書けなかったのだ。
世間は緊急事態宣言だなんだで巣ごもりを推奨される日々。私もこんな世情でなければ、今頃外に遊びに出ては酒を飲みBBQをしてフェスにでも行っていい男をゲット、そこからあれよあれよという間にクンニでもして先月のブログのエントリーは見事に私のクンニレポートで埋まっているはずだったのだが、世間がこうじゃ仕方がない。非常に惜しいがしょうがない。クンニしょうがない。
要するに書くことがないのだ。日中は在宅勤務で家とコンビニを往復する日々。偶の休日も家で大人しくゲームかオナニー。ドラクエのレベル上げかオナニーだ。交互にやりすぎて最早メタルキングを見ると無条件に勃起するようになった。
こうしている今も絶賛zoom会議中なのだが、それ前々期に話してませんでした?といった内容が繰り返される退屈なもの。繰り返される無為なzoom会議。もう部長の家のカーテンの柄は見飽きているのだ。
なにか来ないか。なにか面白い事。起これ奇跡。ブログに書きたくなるようなミラクル。
例えばそう、同僚K。なんか面白い事しろ。クンニしろ、いきなり会議中にクンニしてくれ。頼む。クンニの描写だけで1000文字書くから。頼む。
もしくは後輩のS。なんかしろ。削れ。歯をやすりで削れ。いきなり歯をやすりで削り出せ。エナメル質を粗末にしろ。いきなりニカッと笑ったと思えば何処からかやすりを取り出し犬歯を削れ。もっと尖らせろ。そして尖らせた犬歯でキーボードを噛み砕け。食え。もはやキーボードを食え。テンキーを食え。
なんて願ったところで会社の面々は至って真面目な顔で会議に参加している。くそ、こうなればもう俺がハプニングを起こすしかないのか。死ぬか。いきなり死んでみるか。会議中にいきなり息をひきとってみるか。
なんて考えていると定刻で会議は終了。ふぅ、今日もなにもない日だった。しかし、日常にネタがないなら最早できることは一つだけだ。エピソードトークしかない。します、エピソードトーク。というわけでここまで前文です。前文で後輩にキーボードを食わせるな。
皆さんはハッテン場に行ったことはあるだろうか。発展場とはゲイの人間がSEXする為に集まる社交場のようなもので、異性愛者の言うところのソープとかヘルスとは比べ物にならないほど安価で自らの性欲を満たすことが出来る夢のような場所である。(要出典)
当時私は21歳、ゲイになって間もなかった私はハッテン場という場所に憧れを抱いていた。
その頃出会った私と同い年のゲイの友達はこちらの世界に入るのが早く、こちらの業界の事は知り尽くしている人間だった。そんな彼から出るエピソードトークのいつかはハッテン場でのエピソードのものもいくつかあり、まるでそこは酒池肉林の宴であるかのように語られていた。ハッテン場に行ったことのない私ではあったが、同い年の友人に経験で差をつけられ舐められたくない一心で
あーいいよね、ハッテン場。うん。すげぇ発展できるよね。え?SMルーム?あーあそこね。あそこもいっぱいハッテンできるね。うん、ハッテン著しいよね。インド?って感じ。うんかなりBRICs。ブリブリBRICs。
などと話を合わせていたのだが、遂にはその友人に「じゃあ一緒に今度行こうよ」と言われハッテン場ガチ初心者である私が遂には後には引けなくなったのである。
それは駅から徒歩15分ほどで行ける場所にあり、ビル一棟丸々ハッテン場として運営しているようだった。いざ、目の前にすると謎の迫力がある建物である。
一緒に行こうと言った友人は既に入場しているらしく、中で適当に待つとの連絡が入っていた。なんだ適当に待つ、って。適当にSEXですか?もしかしてSEXしてるんですか?じゃあ俺もう帰っていいですか?などと若干泣きそうになりながら、ビルの入り口をくぐる。
ハッテン場への憧れはあるものの全く知識のない自分は入場してから受付するまでもかなり不安である。まず受付になんて言えばいいんだ?コースとかあります?お触り可ですか?挿入はオプション?
受付に着くなり言われるがままに料金を払い、館内着のサイズも選ばされる。とりあえず一番発展できそうなコースをお願いします、と言おうと思っていたがそんなことを言う暇もなく事務的に中に通される。
とりあえずは鍵のついたリストバンドに書かれた番号のロッカーで着替えをすまし、スマホを確認する。友人からの連絡はなし。どうする...。ハッテン場童貞がいきなり野に放たれてしまった。
こっからなんかないのか?店員さんが席まで案内してくれるまで待つタイプの店なのか?デニーズ?デニーズと同じシステムでいいですか?
友人に着いたよと連絡するのもなんだか癪だ。え?ハッテン場のお作法知らないでやんすか?!と思われそうだからだ。発展場の作法?し、知ってるよ。もはやここはあの酒池肉林の中心地、道行く男の乳首をいきなり舐めても咎められないはずだ...!!
よし、とりあえず道行く人の乳首を舐めようと決心をつけた束の間、背後から友人が声をかけてきた。
どうやら自分が来るまで休憩室みたいなとこで寝ていたらしい。じゃあ、行きますかと伸びをしながら軽やかに言う友人。その足はエレベーターに向かっている。
なんだ、ここでハッテンするわけじゃないのかとひやりとしつつ友人についていく。どうやら2Fと3Fがハッテン出来るスペースらしい。近づく発展の雰囲気に胸も高鳴る。ここまで近づくとハッテンの雰囲気を肌で感じれるぜ、などと言いつつエレベーターを2Fで降りる。
2Fで降りたがなんだか全体が薄暗い。照明がなんだか必要最低限で留められている感じだ。んーもう、危ないわね。えーっと、電気のスイッチは~?と壁の方でスイッチを探し始める私を他所に友人は暗闇でも慣れた足取りで歩を進め、ある大部屋に入っていった。私も金魚の糞の如く後に続く。
異様な雰囲気が流れていた。
薄い暗闇の中に何人かの男が雑魚寝していることは確認できる。そして、聞こえるのは男の寝息、そして乾いた破裂音と粘着質な摩擦音。
こ、これは、もしかして、もしかしてですけど...!は、ハッテンしていらっしゃいます〜?!!?!!今まさにナウで著しいハッテンを展開してらっしゃいます〜?!!?
それまで他人のSEXを間近で見たことなどない私はこの時点で多大な緊張と少しの興奮で吐きそうになっていた。
そんな私を意に介さず友人はひょいひょいと寝ている人間を飛び越えながら辺りを見回しているようだ。そうしている内にある1人に近づくと不意に唐突に脈絡もなく相手の乳首を触りだしたではないか!
こら!も~!ダメでしょ!他人の乳首勝手に触っちゃ!すいません~、普段はこんな子じゃないんですけどね~。ほら、ビスケット!ビスケットあげるからこっちきい!
と言いながら友人の仰天行動を阻止しようと動こうと思ったその一瞬、乳首を触られた相手が友人と刹那で目線を交わしたかと思うとお互いに乳首を触り始めたではないか。
この瞬間、私は理解した。友人と相手方の間で瞬間の目配せのうちになんらかの合意がなされたのだと。あまりの瞬き、あまりの須臾。達人だ。達人の試合を見せられている、そう感じた。
そのまま2人はしばらく乳首をこねくり合っている。一見、乳首をこねくり合っているだけだが、これもなんらかの意味があるのだろう。友人のハッテン場での達人の間合いを見せつけられ、私は早々に戦意を喪失しかけていた。
出来るのか?自分にあんなことが。技は見て盗めというが、そんなレベルの話ではない。そもそもどういう経緯、論理で相手の乳首を触りに行けばいいんだ?論理が、論理が見当たらない。相手の乳首を触りに行くに足る正当な論理が。
正直に言うか?
「すいません、大変恥ずかしながら私はハッテン場初心者であり、経験不足な故に瞬時にあなたの乳首を触りに行く技が使えません。どのようなタイミングで、どのような論理を以て触りに行けばいいですか?」と。
いや、ダメだ。そんな言い訳が許されるような状況ではない。ここは既に達人の間合い。悠長なことをしていれば俺の乳首は...飛ぶ...!!
そうこうしているうちに友人は乳首を触る手は単純なちろちろ触りから相手の乳輪を半時計周りにねっとりと触る触り方に移行している。こいつ...!
こうしている間にも私は乳首を触る重責に苦しめられ続けている。スムーズに乳首を触りに行けなければハッテン場童貞をみすみす晒しているのと一緒だ...!
何か、何かないか。ハッテン場巧者であることを示せるウルトラCは。刹那、間合い、達人、一体となる...!ハッ...!見つけた。このハッテン場を支配する俺のハッテンを...!
剣の達人、上泉伊勢守が残した言葉の一つ。
「我が剣は天地と一つ、ゆえに剣はなくともよいのです。」
ハッテン場を支配するのはSEXだけだと思っていた。しかし違う。真の剣の達人が無刀の極地へと至ったように、真のハッテン場の達人にはSEXすらもいらない!そう、無SEXの極地!!泰然自若、自然との合一...!他者との合意に自分を置くのではなく、ハッテン場そのものと自分を合一させる!!
つまり俺が取るべき行動は、乳首を触るのではなく、ただそこにあればいい。ただそこに存在し、自らをハッテンさせるのだ。ハッテンとは、高めあい。俺はハッテン場において自らを高める....!!
そうして私はただそこにあり続けた。ハッテン場の大部屋の隅っこで時に立ちつくし、時に座禅を組み、ただそこにあり続けた。それこそが俺のハッテンなのだ...!!!
ひとしきり己のハッテンを終え、私はハッテン場を後にした。そうして、建物の外で友人を待ち合流した。友人は一言、どうだった?私は心の中にある一つの確信めいた言葉を吐き出した。
「SEX...したかった...!」
その頬にはひと筋の涙があったと言う。