君の辛さは君だけのもの
喉もと過ぎれば熱さ忘れる。
よく言ったものだ。確かにその通りなんだけど、それは客観的な意見であって、誰かにかけるべき言葉ではない。これは奮起のため自分にかける言葉であるべきだ。
終わりよければすべて良し。
そんなわけではない。終わりが良くても途中がしんどいとその只中はきっとこんなことは思えない。本当にしんどい時は外野からどんなに励まされたって、いい未来が訪れる期待なんて全く持つことが出来ない。
自分達の人生なんて一回きりだし、誰かの人生を生きることは出来ない。自分の今感じている楽しさ、しんどさなんてのは誰かに分け与えることも出来なければ、誰のリアリティを感じることも出来ない。
過ぎたことに対する「なーんだ」なんていう感覚は、きっと誰とも共有できないし共有しちゃいけない。時間という隔たりを以ってしか主観を客観にすることは出来ない。主観が主観であるうちに客観視をしようたって、感情っていうノイズがそれを歪めてしまう。
どんなに自分自身を冷静にまとめようとしたって、主観的な自分自身にそれはできない。今がそれをきっと邪魔をする。
先日、失恋の相談をされた。結構にヘビーな内容だった。しかし、自分は彼になにも出来なかった。口先だけで生きてきたような人間だが、ほんとに何を言えばいいのか分からなかったのだ。時間が経てばきっといい思い出になるよ、なんて言ってやればよかったのだろうか。けどそれは憚られた。
自分の客観的意見は彼の主観にはそぐわない。彼の辛さは彼だけのものだ。辛さの真っ只中にいる彼を言葉で救うことは無理だと悟った。ただ、話を聞いているだけに徹した自分は果たして彼にとって正解だったのだろうか。
この世界は四次元空間らしい。ドラ〇もんに頼らずして、四次元世界に我々は生きている。0次元が点、1次元が線、2次元が平面、3次元が空間、4次元は時間とすると、てっきり3次元に住んでいるものだと思っていたが、時間って言う概念が存在している以上4次元らしい。
4次元に生きている我々には3次元分しか知覚できない。4次元の真っ最中だから4次元目を知覚することはできない。4次元を知覚するには5次元に、それこそ平行世界に生きるしかない。
何が言いたいかっていうと、何をしようたって真っ只中ではなにも分からないってことだ。省みれないってことだ。4次元の真っ只中では4次元は分からないように、辛さの真っ只中ではその辛さの本質は分からない。
失恋を経験した彼も今、その真っ只中の辛さに苛まれている。その辛さの本質は真っ只中だと分からないけど、真っ只中を経験しないと何も生まれない。誰に代わることも、誰に変えることもできない。
そんなことしか思えない自分は果たして正しい人間なのだろうか。彼にとって良い相談相手足り得たのだろうか。台風一過の夜に思う。