愛の前に全ては無駄なんてあっていいはずがない
昨日、深夜に起きてしまった。もう一度寝ようとしても、意識は覚醒を続け再びの入眠を許してくれそうになかった。そういう時は仕方なくテレビをつけて意識ここにあらずという感じでテレビを眺める。右耳から左耳にテレビの情報がスルーされていくなかで一つ、意識をテレビに釘付けされる言葉が耳に飛び込んできた。
「ダメよ!私たち敵同士、戦争中じゃない!」
「愛の前にそんなこと関係ないだろ?」
「んもぅ…」
衝撃である。それを言ってはお仕舞いである。
元々深夜にやっている安いアクション映画だと思っていたが、この台詞を聞いてそれは確信に変わる。
世界のルールガン無視の愛の大安売りである。この台詞が許されるとなると、愛とされるものはこの世を包括する全ての理念であり、愛の前には全てのルール・事象は些事と化す。あらゆる規則の上位互換概念に愛が君臨し、世に蔓延るルールは形式的なものに過ぎず、愛があれば全てが許されてしまう。「んもぅ…」ではない。「んもぅ…」の一言で許されることではない。
「ダメよ!赤信号じゃない!」「愛の前にそんなこと関係ないだろ?」「んもぅ…」
なんてパターンも考えられる。恐らく横断歩道の向こうにヒロインがいるのだろう。そこへ待ちきれず自らの危険を顧みずに走り出す主人公。赤信号だというのに。警察官がパトカーに乗ってうろうろしていようと関係ない。何しろそこには愛があるのだから。警察の振りかざす道路交通法なんて愛の前には塵芥だ。愛が全てを圧倒的質量、力をもって駆逐していく。あらゆる人々、あらゆる規則が愛の前ではストップモーション。敢然とこの会話をこなす主人公たちの姿がありありと想像できる。
「ダメよ!高血圧じゃない!」「愛の前にそんなこと関係ないだろ?」「んもう…」
ゲイの世界では男女の恋愛ではあまりないデブ専という性癖が普通に横行している。デブ専ということを異端と感じる人はほとんどいない。それほどまでに一定数デブ専は存在する。
このパターンでは主人公が、ヒロインがデブ専であるが為に必死に太っているのだろう。血圧は常時180を超え、コレストロール値は危険値を跨ぎもはや天をも突く。人生100年時代構想など彼の前では春の夢の如し。たとえ早死にしようと彼はヒロインの理想の体型になっていく。担当医師の制止すらもそれは愛の前では彼の耳に入らないのだろう。だって愛があるから。誰に何を言われても無駄だろう。これにはダイエット外来もだんまりを決め込むしかない。
「ダメよ!就業時間外じゃない!」「愛の前にそんなこと関係ないだろ?」「んもぅ…」
愛の前には労基法も云々…
これらのことがまかり通ってしまう。げに恐ろしきは愛。愛は尊いものだが愛を理由に全てを投げ出してはいけないな、そう思わされた良い映画だった。ちなみに、タイトルはもう忘れた。
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