OTNK日記

20代。ゲイ。種々雑多な日記。

買物戦線異常あり

空は突き抜けるように青い。この青さは地平線まで続いており、今日は世界すべてが快晴なのではないかという錯覚をうける。素敵な休日だ。朝を早々に起きて、洗濯物を済まし食器の洗い物も済ませた。もう怖いものはない。完全にフリーだ、あとは休日を楽しむだけだ。と思った矢先、冷蔵庫の中身が乏しいことに気づいた。買物に出かけねばならない。

空は青い。粗方の家事も済んでいる。つまり気分が良かった。そこで、買物に徒歩で出かけることにした。都合の良いことにいつも買物に行くスーパーは徒歩10分程の所にある。普段は、車で行く。田舎民は車移動に慣らされすぎて、徒歩5分でも車で移動するきらいがある。そんな地球環境に優しくない怠惰を今日は気分の良さで跳ね飛ばす。歩いていこう。いきものがかりを聴きながらスーパーへ移動した。

我が家にとっての食品の必需品は3つある。鶏胸肉と卵と牛乳である。鶏胸肉は言わずもがな安い。親子丼、ピカタ、野菜炒め。とりあえずお肉が欲しい時には鶏胸肉が登板する。岩瀬並みの登板回数を誇っている。そして卵。これは圧倒的ユーティリティプレイヤー森野将彦もびっくりの万能感である。必然その使用頻度も多い。最後に牛乳。これは毎朝フルグラを食べるため絶対に欠かせない。牛乳のないフルグラはただのひまわりの種である。ハム太郎になるつもりはない。毎朝の食を支えてくれるその様は、朝倉コーチのようである。

むりくり当てはめすぎた感があるが、要はその三つの食材が我が家の食を支えている。なので、買物に行く際もその3つの価格を吟味する。なんと今日は卵が10個入りで98円で売られていた。チロルチョコが5円で売られているような衝撃である。即買物かごにいれた。しかし、この安さである。もう一つと手が伸びそうになる。一人暮らしの食生活で10個入り2パックを消費期限内で使い切ることは非常に難しい。安さに魅了され、食卓が卵料理一色になる危険性を大いに孕んでいる。しかしここで買わねば男が廃る。鶏胸肉と牛乳と共に卵2パックをレジへと通した。

異変は帰り道で起こった。劇的に安い卵を買えた喜びに浮かれていた。鶏胸肉、牛乳、卵他諸々でパンパンとなった買物袋を手提げてえっちらおっちらと歩いていると、狭い歩道に一台の自転車が滑り込んできた。その自転車は重力加速度的にスピードを上げ、自分の横を通り過ぎた。その瞬間、ビックバンにも似た衝撃が買物袋を提げていた左手を襲う。当て逃げされていた。横を通り過ぎる車体。瞬間。衝撃。気づいたときにはもう遅い。音速的な速さと錯覚するほどの自転車は、気づいたときには遥か彼方。交差点を右に曲がりその機影は既に視界では捉えられない。買物袋と自転車が接触したことは、瞬時に認識できた。危ないなぁ、これが小さな子供だったらどうするんだ。などと他者を当て込んで心配する余裕はその時はあった。

数秒の後、気づく。卵!!卵は無事か!?無慈悲で予期できない衝突に晒された俺の98円の卵は果たして原型を保っているのか。激安鶏卵は炸裂していた。傍らの牛乳パックはガウディの建造物のように変形している。これから自分の血となり肉となるはずだった、我が子というにも等しい激安鶏卵。それがかの自転車により殺傷されてしまった。もはや原型を留めていない彼らに自分が出来ることは悼むことだけである。道路の端にて彼らを盛大に悼むことをしてやった。卵…卵…とうわ言のように呟きながら卵パックを労わる大男。ホラーかと。

なぜこんなことになったのか。自分がもっと買物袋に気を使っていれば、車で買物に行っていれば。自責の念は尽きない。しかし、後悔はなにも生まない。前に進まなければ。割れた卵は幸いパックの中で炸裂しているだけである。まだかろうじて生きている。限りなく細い線ではあるが、まだ生きている。

卵パックの頑丈さに感謝しつつ、救出作業に入る。まず殻を取り除き、ぶちまけられた卵黄、卵白をボウルに移す。それをしゃかりきにかき混ぜ出汁を足していく。死の淵から甦ると強くなるサイヤ人を想像しながら、卵を焼いていく。

結果、めちゃくちゃデカイ卵焼きが完成した。プリン体ドンと来いという感じの食べ物である。しかし、食べ物として甦った我が子に感謝しながら美味しく頂いた。そんな昼下がりであった。

 

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