OTNK日記

20代。ゲイ。種々雑多な日記。

賛否両論、天気の子、感想。

このブログには多分に「天気の子」のネタバレを含んでいますので、未視聴の方はご注意下さい。

 

見てきました、天気の子。

 

映画『天気の子』公式サイト

 

自分は新海誠作品は前作「君の名は。」しか見ていない。なので、「天気の子」には「君の名は。」の様なハッピーエンド幸せ展開を期待して観に行ったのだがその期待とは裏腹の、それこそ雨の様に心の中を曇らせる映画だった。しかし、「君の名は。」以上に考えさせられる作品であったので、その感想を適当にここに書いておこうと思う。

 

まず。「天気の子」の作品自体の感想としては自分は面白かったと言える。表面上のエンタメ要素としても鑑賞後の考えさせられる感としても中々のものだったと思う。

しかし、一緒に作品を観に行った彼氏はあんまり面白くなかったという感想を持ったようだ。その理由としては

・主人公達が犯罪ばかりしていて感情移入出来なかった

・東京disりがすごい

・エンディングがよく分かんない

とのことだ。

まぁ確かに、これらの要素は大いにある。これが所謂「君の名は。」との違いとなって、物語を正面から楽しめない要素になっているのだろう。ということで、まずは彼氏の感想からこの物語を考えていく。

 

・主人公達が犯罪ばかりしていて感情移入出来ない

そもそも主人公の帆高くんは家出少年で絶賛捜索届け出され中の全力補導少年だ。更には物語後半では、帆高くんは警察に追われることになり警察との大捕物を繰り広げる歴とした犯罪者に成長を遂げる。

ヒロインの陽菜ちゃんもこれまた未成年のみで自活する要保護対象者だ。そして、生活に困って売春行為に手を出しかけたりする。

ここまで書くと完全にアウトローカップルである。そんな彼らは完全に東京という完成された社会の中で逸脱者であり、「天気の子」はそんな逸脱者達の物語と言える。確かに普通の日常を送る我々には感情移入し難い設定であろう。

 

・東京disりがすごい

君の名は。」では田舎の少女、三葉が夢に見る所謂キラキラした東京の姿が描かれていた。しかし今回は全くの裏。ギラギラしたネオン街だったり、未成年を喰いものにする大人、身寄りの無い人を敬遠する人々が描かれている。むしろ意識的に描かれているとすら感じた程に、東京の裏の面が押し出されている。

ただ、それが一様に悪いものとして描かれていた訳では無いように感じた。

帆高くんの家出生活を支えたのはそういう東京のアングラな部分であったし、手を差し伸べたのは怪しい雑誌の編集者である小栗旬(名前忘れた)であったりした。

東京という完成されたシステムの中でつまはじきにされた主人公達を助けてくれるのもまた東京という完成されたシステムの裏側であった。そういう東京という街の二面性を描きたくて、あえて東京disとも取れる描写があったのではないかなと思う。

 

・エンディングがよく分かんない

エンディングの違いが恐らく「君の名は。」との決定的な違いなのだろうと思う。 

ここに来て初めて物語の大筋に触れるが、「天気の子」の大筋は「君の名は。」となんら変わらない。

男の子が数奇な運命の女の子を救う

ただこれだけの話だ。

これだけであるのに「天気の子」と「君の名は。」のエンディングは大きく違うものになっている。

君の名は。」は瀧くんが三葉が死んでしまうという過去を変えて、そして未来で出会う。隕石の衝突で死んでしまったみんなも無事でそれぞれの日常を歩んでいく。そんな最大多数の最大幸福的な救いのある物語だ。

対して「天気の子」では、帆高くんが陽菜ちゃんを助けることは出来た。しかしその救いの代償で人柱を失った東京は雨が降り続け雨の下に沈む。いわば、帆高くんの救いを否定するような終わりだ。1人の女の子を助ける為に最大多数の幸福を犠牲にする。そして主人公はそんな世界の在り方を変えてしまった東京を見て「狂っていてもそれを受け入れていこう」と締めて物語を終える。

1人を救う為に皆んなを犠牲にして、それを受け入れていってしまう。認めて諦めていってしまう。なんてエゴイズム溢れる終わり方なのだろうと思わせること請け合いだ。

君の名は。」にあった鑑賞後の爽やかな気持ちとは正反対のモヤモヤとした、それこそ雨天のような沈んでしまう気持ち。それが「天気の子」のエンディングにはこめられているように感じる。

 

この一連の物語を面白いと捉えるか面白くないと捉えるかは、それこそエンディングの捉え方に左右されると思った。

この映画を彼氏はあんまり面白くないと言った。彼は最大多数の幸福を願い、主人公の世界の在り方を変えてしうようなエゴを受容出来なかったのだろう。まぁいいや、で済ませられるものではないと思ったのだろう。社会システムから逸脱した主人公たちを憂い、東京の裏面を嘆き、主人公のエゴを是としなかった。彼氏がこれまで歩んできた人生の中で積み上げられた価値観に合わなかった。最大多数の幸福を得られなかったのだから、これはバットエンドだと捉えた。だから、あまり面白みを感じれなかった。そういうことだと思う。

対して自分は、この映画を面白いと感じた。それは社会システムから逸脱した主人公たちに共感し、東京の裏面を是認し、主人公のエゴを認容したからだろう。映画の中の彼らのエゴをそれもまた良しと受容出来たからだ。(どちらかと言うと受容出来る方がダメ人間度は高い)まぁ、それでも愛してる人と一緒にいられるのだから良いよね。みたいな適当加減で物語を捉えればこの物語はハッピーエンドになる。だから、面白いと感じる。

 

この物語は解釈次第でその人の人となりとか考え方をはっきりとさせてしまう。賛否両論を生み出してしまう。新海誠監督はそういうとこも織り込み済でこの作品を世に出したのではないかと思う。

ただ、勿論賛同の方が多いと踏んだのだろう。主人公のエゴを受容出来てしまう人。愛してる人といられればそれで良い。世界がどうなろうとどうでも良い。そんな風に思える人が多いと踏んだのだからこの物語を作ったのだろう。これを足掛かりに新海誠監督は現代社会への警鐘を!!!とか言うつもりは毛頭ない。ただ、世の中そういう人は多いだろうとは自分も思う。かくいう自分がそうだ。

急な身の上話で申し訳ないが、自分はゲイとして生まれてこの現代社会を生きている。この現代社会においては男好きである自分は、「天気の子」の主人公たちと同じく社会からの逸脱者だ。けれど、好きな人と一緒にはいられるし、それで良いと思っている。社会のシステムを変えようとも思わないし、最大多数の幸福も別に知ったこっちゃない。だからこそこの物語との親和性が高いのだろう。

 

自分の幸せを考えて過ごせればそれが一番。こういう考えが善か悪かを論じることは難しい。誰もがきっと持っている感情ではあるだろうからだ。変化を恐れ、変化を受け入れる。そんな水のように流れるままで生きることを批判することは誰にも出来ない。

ただ、この映画はそれを観賞した人間に考えさせてくれる不思議な映画だと言うことは出来る。あなたはこの映画を観てどう思っただろうか。ちょっとだけ考えてみるのも悪くないかもしれない。

 

 

最後に作中のセリフで最も好きなセリフを書いて終わろうと思う。このセリフに共感する人は今幸せな人だろう。それは掛け値無しに良いことだろう。今を大事にして欲しい。

 

『神様。お願いです。これ以上僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないで下さい。』

 

 

 

 

 

 

 

天気の子

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