OTNK日記

20代。ゲイ。種々雑多な日記。

風が運んだ思い出

記憶を呼び覚ます鍵ってのは、匂いや味、音や痛覚などの知覚に基づいている。そんなことは前に書いた覚えがある。(下記参照)

 

omochi0721.hatenablog.com

 

 

晴れた日の休日。暖かな陽気に誘われて窓を開ける。心地よい風を感じていると風と共に近くの学校からだろうか、吹奏楽の音色が聞こえてくる。吹奏楽の音色を聞くと、自分が中学生だった頃を否応無しに思い出す。

 

自分の通った中学校は吹奏楽部がそこそこ強かった。全国大会なんかでの賞はほとんど取ったことがないものの、地域での実力はピカイチだった。そんな中途半端といったら中途半端な実力を持っていた我が校の吹奏楽部。しかし地域で一番という成績を維持できる程には練習に熱が入っていたようで、放課後の部活時間にはそこかしこでけたたまましく楽器の音が響いていた。

中学生時代、自分は柔道部に所属していた。校内の隅にある柔剣道場で中学時代の青春の多くの時間をを過ごした。自分達が体作りをしていると、校舎の内外からピッチを合わせる音が響く。そして自分達が乱取り練習を始めたタイミングで、吹奏楽部もパートごとに分かれて練習を始める。あらゆるパートがごちゃまぜになった音環境の中で、我が校の部活は行われていた。

中学の三年間、必ずと言って良いほど吹奏楽の音を聞きながら柔道の練習に励んでいたわけだ。すると、自分の中で中学柔道のBGMは吹奏楽の音色になってしまっている。

特に目立った成績を残したわけでもない中学柔道。自分より強い選手なんて全国にはごまんといた。負けて然るべき選手だったように思う。しかし、中学生活ってのは戦績には変えられないプレシャスなサムシングであり、振り返ってみれば部活動も含めてそれは間違いなく青春で、強烈な淡いメモリーとなって自分の中に納められている。柔道の練習風景はそのまま中学生活の想起ともなり、発展途上故の時がゆっくりと流れる日々の想起だったりする。

 

そんな中学時代を思い起こさせる音色が、大人になって一人暮らしをしている街からも聞こえてくる。心がざわざわする不思議な感覚だ。

当時と似たような日本晴れの空の下、近くの公園の木々は色をつけ始める。見知らぬ街にて見知った街の一昔を想う。なんて贅沢なことだ。なんて切ないことだ。遠くで揺れる木々のずっと手前、我が家のベランダで揺れるYシャツが今の自分の現実で、畳が擦れる音も吹奏楽の音色も今はもうない過ぎ去った時間だ。

たまたま聞こえた吹奏楽の音に昔の記憶を思い出す。当時にしてみれば辛いこともあったが、思い出せるだけの思い出があり、それが今や良いものになっている現状に感謝しつつ、今日も自分は昼寝をするのであった。

 

ノスタルジア

ノスタルジア